第32話
第14.5話:黒魔達の秘密 ミニ番外編
とある日。
何時も通り、リヒト達は働いていた。
お客様が帰り始め、最後のお客様が出ていった時の事だった。
そんな、何時も通り…なのだが、リヒトはずっと気になっていることがある。
それは…”人間以外にも、なれるのか”と言う事である。
皆さん知っての通り、月と陽は悪魔である。
ただ、普通の悪魔と決定的に違うのは、”悪さをしない”と言う事だ。
あ、一応陽の名誉のために言っておくが、陽のイタズラは違う。
あれは身内ネタなる、身内イタズラである。
まぁ、月の反応が面白いと言う理由が9割くらいある訳だが。(他は単なるイタズラ好き)
普通の悪魔とは違う、と言っておく。
だから、その悪魔達と見分けるために、陽と月は”黒魔”と言われるわけだ。
(説明ナレーション:作者)
だから、率直に聞くことにした。
「なぁ、2人って人形以外にもなれるのか?」
ちなみに、2人は何時も、カフェで働いている時は尻尾と角は隠す。
お客様を怖がらせないためだ。
一旦消すこともできる、と言った方が良いかもしれない。
(説明ナレーション以下略)
なので、お客様が帰った今、2人は尻尾と角を出していた。
「あ?人形ァ?言い方気に食わねーな」
「うーん、こっちが本来の姿?良く分かんないけど…」
「「(人形以外に)なれるよ(ぞ)」」
と、同時に…ポンッ…!
白い煙が2人を覆ったかと思うと…
現れたのは…
「………!!!???」
小さな虫…「虫じゃねーよ!」
リヒトの心の声を読んだように、食い気味に陽がツッコミを入れる。
そこには、野球ボールくらいのサイズの顔に蝙蝠の羽が着いた何とも言えない姿だった。
顔と言えど、ボールにミニキャラのような目が着いたような感じで、(まさにそう)口があるようには見えない。
…どうやって話しているのだろうか。
色は黒色をベースに紫色が混じっている。
シーン…と辺りが静かになる。
リヒトはポカーンとしたまま、精一杯のコメントをする。
「………なんか、思ってたのと違う」
「…だろうな」
「…そうだよね」
リヒトは今、人間とは言い難い、片や、怪物とも言い難い謎の生物を目の当たりにしていた。
それは、先程も言った通り、リヒトの想像とはだいぶ違い、気持ち悪い、良く分からない気分に陥っていた。
要するに、可愛いのだ。
「だから嫌なんだよ…」
「皆、初めて見た時こういう反応するもんね…」
どうやら、リヒトがいない間に苦労をしていたようだ。
2人はもう良いだろうと思ったのか、元の姿(?)に戻った。
「なんかごめん…と言うか、何の時使うんだ?」
「黄泉が書いた書類を閻魔…閻魔様の所まで送るんだよ。まぁ途中で牛頭(うしあたま)と馬頭(うまあたま)が貰っていくんだけどな」
途中で閻魔と呼び捨てにしていた様な気がするが、気のせいだろうか。
「牛頭馬頭ね…」
月が苦笑いする。
いつの間にか、3人は円形に集まって談笑していた。
陽はホウキの柄の部分に顎を乗せている。
月は変身した際に落としたホウキを拾い、片付けた。
「牛頭馬頭ってさ、確か地獄の門の前にいるイメージなんだけど」
今度はリヒトが話す。
「あぁーそれね、本当はリヒトの言ってる通り門の下にいるんだけど、10年くらい前に鬼の繁殖が広がってさ、大量に増えたんだよ。だからちょうど2人組の牛頭馬頭には閻魔様の元にって話合い、冥界会議で決まったらしくて」
だから今、2人は閻魔様の元にいるんだ、と説明した。
「それによぉ、アイツら以上に鬼畜なヤツなんて地獄じゃ、ゴロゴロいるぜ?」
ニヤリ、と陽が不敵の笑みを浮かべる。
「陽、そんな誤解を生む発言止めなよ。…まぁ確かに昔、門番の鬼が寝てたから、起こそうと思ったら、陽が金棒でぶん殴ったよね。それで跡形もなくなるくらい、ぶん殴られそうになった話とか、地獄にいた死者が後で金あげるからって陽とコンビ組んで、脱出しようとしたよね。けど、案の定見つかって1ヶ月くらい地獄にいたし。あーそれには何故か僕も巻き込まれて…後はー…」
滞りなくスラスラと出てくる悪行の数々。
後、話す度に月の目が虚無って来ているのだが、気のせいだろうか。
ーーきっと気のせいだ、うん。
それもこれも、殆どが陽の仕業だった。
(それは気になる………)
若干引いて、呆れたものの、この2人ならありえそうだな、と思ったリヒトだった。
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