第12話

第7話:桐生 隆二 中編


「はぁっ!?マジで?笑われたぁ?」

その日の昼休み、俺は達平と屋上で昼飯を食べていた。

そして、あの話をして今に至る。

「そーなんだよ…俺の方を見て笑ったんだよ。…不気味だった。」

あの笑みは、普通に気づいてニコッと笑った、と言うより、何か意味深に笑った感じだったからだ。

俺だって、何かなきゃこんなに不気味には思わない。

怖さが少し、和らいだ。

恐怖を人に話すと和らぐのは本当らしい。

安堵のため息をついた。

「でもさー、」

達平はいちごミルクを飲みながら、呟く。

「もしかしたら人と話すのが苦手で、たまたま目が合ったお前に笑いかけたんじゃないのか?」

笑いかけるのも苦手だとかさー、と、達平が言う。

達平なりの安心しろ、と言う言葉に、そうかもなと相槌を打ち、お昼が終了した。

だから…

俺達は気づかなかった。

ニタッと笑う、少女の姿に…。

それから宵間の件もあったが、特に何もなく平穏に学校生活をすごした。

良いこともあった。

「宜しくね。」

茅野と仲良くなったのだ。

きっかけは簡単だった。

茅野が落とした消しゴムを俺が拾った。

ーーただそれだけ。

だが、まぁそんな少女マンガではないので、仲良くなれた理由はそれだけでは無い。

「ねぇねぇ!今日も対よろ、ね!」

「…おぅ!」

戦闘ゲーム、これが俺と茅野の仲良くなった1番のきっかけだ。

消しゴムを拾った後、色んな話をして、お互い戦闘ゲーム好きと気が合い、話は盛り上がった。

ゲームをやってきて良かった、と心から思った。

優しく、穏やかでクラスのマドンナ的存在の茅野が戦闘ゲームが趣味とは意外だった。

それでも、2人でゲームの話をするのは楽しかった。

周りがマドンナと仲良くしているのに、物凄い視線を送られ、羨ましがられたが、気にしなかった。

ただ、2人で笑っていたかった。

ただ、それだけだった。


俺達は急速に仲良くなっていった。

いつ付き合っても、可笑しくないくらいに。

お互い告白はしなかった。

2人、お互いの気持ちは分かっていたから。

ーー通じあっていたから。

運動会、文化祭、お正月…

たくさんの季節を、行事を、一緒に過ごした。

全てが、世界が輝いて見えた。

今までにないくらい幸せだった。

しかし、悪魔はひっそりと近づいていた。

俺の知らない内に…

じっくりと蝕んでいた。

「もうすぐバレンタインだね!…隆二くんは甘いもの、好き?」

「あぁ!あまり食べないけど、好きだよ」

「本当!良かった!美味しいの、作るから楽しみにしててね!」

花が咲き誇るような笑顔を茅野は…いや、阿莉沙は向けた。

(チョコ渡す事、本人に言うっけ…?)

少し謎が残ったが、阿莉沙はまぁ、天然と言う部類なのだ。

「(まぁ可愛いから良いんだけど…)」

「…?何か言った?隆二くん」

「いや。」

楽しみにしてるよ、と言って俺達は別れた。

刺すような視線を向けた少女の影に気づくことなく…。

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