第11話

第7話:桐生 隆二 前編


透花高校。

普通科 200人、進学科 100人のマンモス校。

そして、俺がこれから通う…高校だ。

ずっと憧れていたこの高校は、家からも近く、交通アクセスも良い。

共学で勉強も部活も盛ん。

『文武両道』が校訓の、学校だ。

「よーすっ!隆二。お前とはまた一緒だな」

ガシッと俺の肩を組み、朝から元気に声をかけてきたのは、俺の小学校からの親友、倉橋 達平。

ここで一緒になるのは、なんとなく予想が着いていた。

今まで何をやるにも似た者通し。

趣味や特技は違うものの、馬が合う。

「俺らは確かB組だったよな?」

イヤフォンでノリノリで音楽を聴いている達平に尋ねる。

「そうやで」

達平はイヤフォンを片方外して答えた。

「んじゃ、さっさと行こーぜ」

「あいよ」

くだらない話をしながら、教室へ足を急がせた。


***


入学式も終わり、クラスはわいわいと賑わっていた。

もうすでに何組かのグループができており、それぞれ楽しく話している。

俺はもちろん、達平と話していた。

苗字が近いので、席は前後だった。

早速ラッキー、と思いつつ、先生が入ってきたのを確認して、前を向いた。

「皆すでに仲良くしていて先生は嬉しく思う。それでは自己紹介でもしていこう」

それぞれ名前と一言言ってけーと先生は言った。

緊張して噛む者、ハキハキ喋る者、なんとか頑張って言う者…

楽しくやっていたら、自分の番が来た。

「…桐生 隆二って言います。見た目で怖がられることが多いっすけど、仲良くしたいのでよろしく!」

そう。

俺は目つきが少し悪いせいか、怖がられることが多い。

だが、クラスの元気な雰囲気と、「よろしくなー」と言う声で、仲良くなれそうな気がして、ホット息を着く。

その後、「その目つきが悪い隆二と小学校から親友やってまーす!倉橋達平です、よろ!」と、達平がウケを取り、順調に自己紹介は進んで行った。

その中でも、特に1番盛り上がったのはーー

「…茅野 阿莉沙です!皆さんと仲良くなれたら嬉しいです…!」

よろしくお願いします、と丁寧にぺこりとお辞儀をしている。

クラス全員が「可愛い」と思うほど、茅野は可愛かった。

皆がほわほわとしだす。

入学早々、茅野はクラスのマドンナになったのだった。

茅野が紹介し終わったあとも、まだもう少し続いた。

そして、最後。

「…宵間 煌乃よ。よろしく」

1番短く述べた。

少し、シーンとクラスが静かになる。

宵間は少し、なんと言ったら良いのか、独特の雰囲気を持っていた。

前髪は目が隠れるほどあったし、それもあるかもしれない。

なんとも微妙な空気になったところで、先生がパンっと両手を合わせ、叩く。

「…よ、よし!みんな終わった事だし、HRを初めて行くぞー!」

その場を明るくするように先生が言い、クラスもまたわいわいと騒がしくなる。

だが、俺はその空気の中、なんとなく宵間が気になり、チラリと見てみる。

「……!!」

その時、パチッと宵間と目が合った。

ニヤッと宵間が笑った…ような気がした。

背筋に寒気を覚えながら、俺は静かに前を向いた。

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