第10話

第6話:初恋とビターチョコレートはほろ苦い


「…あ、あの…」

俺は戸惑っていた。

暗い道から入った先は、カフェ?(たぶん内装からしてあってる)だった。

こう言う所に行き慣れていないのもあったが、自分がどこにいるかも分からない上でカフェがあったので、緊張…と言うより、安心?もあるけど不安の方が大きかった。

「いらっしゃいませ、お好きな席へどうぞ」

黒い髪の少年が、両手にお盆を抱えながら、声をかけてくれた。

紫色のギャルソンエプロンに、同じような色のズボン。

そして少し珍しい(俺としては)パーカーを羽織っていた。

そして、何より違うのはーー

「(…つ、角!?しっぽ!?)」

そう、少年には人間にはまずないであろう、角としっぽが生えていた。

コンカフェかとも思ったが、内装からして、そう言うのにこだわっているようには見えない。

「…お客様、怖がらせてしまいすみません。…こら陽、早くしまいなさい。」

「へいへい」

さっきの少年は陽、と言うらしい。

陽と言われた少年は、角としっぽをしまい、キッチンに消えていった。

それを見送った後、申し訳なさそうに少女が入れ替わりでこちらに来た。

菫色の少しタレ目な目。少しくせっ毛のある黒髪を横に結んでいる。

目が菫色だからか、紫色のリボンが良く似合っていた。

服は白シャツに髪飾りと同じ色のリボンを付け、紫色のプリーツスカートを履いている。

膝より長い靴下は、スカートより色の薄い紫で、端だけ色が濃い。

靴は黒色。

ここの店は、紫色を基調とした物が多い。

そう、考えていると、少女は話し出す。

「…ここは黄泉路。現世とあの世を繋ぐ道です。ここは前世の記憶が無い者…」

まとめると、ここは黄泉路で、前世の記憶がない人や、未練がある人が来る。

そして、ここの料理を食べて記憶を取り戻し、未練を無くしてからまた暗い道…黄泉路に戻り、閻魔の元へ行くと言う。

どうやら、俺は死んでいるらしい。

(…ここはそう言う設定のカフェ、なのか?)

俺の心の中の疑問を読み取ったのか、黄泉さん(さっき教えてくれた)が教えてくれる。

「…ここは設定ではありません。全て現実です。貴方は死んでいます。先程の彼は、黒魔(こくま)と言い、悪魔の仲間です。悪魔とは違って、種族的には人間に危害を加えないので安心を。」

俺にははっきり『死んだ』と言った方が良いと思ったのか、丁寧かつはっきりと教えてくれた。

「…あ、でもカフェってことはメニュー…あれ?ない…」

「お客様の生前の思い出の料理を出しているので、メニューはないんですよ。代金もいただいておりません。」

では、私は料理を作ってきますね、と黄泉さんは席を離れた。

なるほど…そう言う仕組みなのか。

ようやく整理できてきた。

俺はとりあえず料理を食べ、記憶を取り戻さなければ行けないらしい。

あたりを見回すが、俺と同年代はおらず、年配の方が多かった。

魚の煮付けに、おひたし。

皆、それぞれ違う料理に口をつけている。

俺にはどんな料理が来るのだろうか…そう考えていた時

「お待たせしました、ビターチョコレートです」

コトッと机に置かれたのは、チョコレート。

その名の通り、皿にちょこんと乗っている。

上は丸く、横から見たら台形の形。

ビターだからか、色は濃い。

「…これが俺の…」

「えぇ。どうぞ味わってください」

なぜ俺の思い出がチョコレートなのか、今すぐ解決したくて、1粒取り、口に入れた。


桐生 隆二(17)、過去を見る。

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