第9話

第5話:もうすぐバレンタイン 前編


(…とうとう来た…!この季節が!!)

月は、燃えていた。

キッチンの壁にかけてあるカレンダーには、ある日付に赤ペンでハートが書かれている。

2月14日。バレンタインデーである。

月にとって、とてもそれはとても大切な日であった。

ここで一つ、言っておこう。

月は…黄泉さんのことが好きだ。

だからこそ、緊張と期待があるのである。

「掃除は終わったの?月。ありがとう」

ご本人登場。

黄泉は月に気づき、お礼を言う。

黄泉は、今調理をしていた。

鍋を丁寧にかき混ぜている。

その中はーー

「…チョコレート…ですか?」

月は思わず尋ねた。

平然を装って。

「えぇ、そうよ。美味しそうでしょ?」

ヘラで少しチョコレートをすくい、笑う黄泉。

心の中でドキッとしながら、月はロッカーに箒を戻す。

「…お、美味しそうですね!よ、良ければ味見でも…」

黄泉の作るチョコを1番先に食べたい月。

しかし

「今日はだめよ。…後であげるから」

鍋に集中してるのか、こっちを見なかったが、月にそんなことは関係なかった。

(…え、えぇ〜!!?)

最後の言葉しか、頭に残っていなかった。

「…た、たた楽しみにしてますね?」

少し疑問形になりながら、ギクシャクした動きでテーブルのセットをしに行った。

月の翻弄されまくる日が始まったのだった。

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