第7話
エピローグ
「…私…お母さん殺しちゃってたんだ…」
涙が頬を伝う。
カップに入っていた紅茶は、もう残り僅かだった。
「…一ノ瀬さん…」
同情するように、月が声をかける。
「これが記憶、かぁ…私が可愛い服着てる理由ってそう言うことだったんですね…」
現実を受け入れるには、まだ時間がかかりそうだ。
「…一ノ瀬さん、貴方はこれからここで前を向かなければ行けません。…嫌でも。」
黄泉さんは真剣な眼差しで言う。
「…そうですね。ここを出たら、お母さんの所へ行けるんですか?」
「えぇ。…ですが、貴方は殺人と言う罪を犯しています。貴方は地獄行きでしょうから…お母さんと会うのはまだ少し先でしょう。」
そうだ。
黄泉さんの言う通り、私は罪を犯している。
これから、罪に向き合わなくては行けない。
今度こそ、逃げない。
「…あ、私お金もってないんですけど…」
思い出した。
代金が払えないのだが…
「ここでは代金はいただいておりません。ここは現世とあの世を繋ぐ、黄泉路ですから。」
面白そうに微笑む黄泉さん。
「分かりました。ありがとうございます、黄泉さん」
玄関まで行き、ドアノブに手をかける。
「…いつか天国で会えるよう、手配しておきますね。…貴方の心が少しでも晴れるように」
後ろは振り返らなかった。
本当に優しい人だった。
もう行けないはずだけど、またここに行きたいと思った。
優しさに微笑みながら、日華はまた暗闇を歩き始めた。
今度はしっかりと、意思を持って。
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