第5話

第3話:ハチミツレモンティー


「『自分が何故亡くなったか』、『未練がある』人達が来る場所なんです。」


まとめると、私はなくなっていて、亡くなった原因が分からないか、未練があるから、ここにいる…らしい。

分かったような、分からないような。

とりあえず、納得することにした。

考えても仕方ない気がしたからだ。

「ここにいては何ですし、席に座りませんか?」

少年が言う。

名前を黄泉さんに尋ねると、月と言うらしい。

後もう1人の従業員は陽と言うのだと、教えてくれた。

通された席に行こうとして、ふと横にある鏡に目がいく。

そこには…

「…可愛い…」

思わず呟く。

私らしい…自分が映っていた。

ふわふわの金髪。

青い目に、ロリータ系の服。

自分はこんな姿をしていたのか。

「…お客様?」

しばらく見とれていたらしく、心配するような声が降ってきた。

「…あ、す、すみません!」

1番近い席に座った。

そのタイミングで、月さんが水を持ってきてくれた。

黄泉さんも一緒に来て、話を始めた。

「ここでは、メニューがありません。お客様の、生前1番心に残っている食事をだすことになっているんです。ですから、しばらくお待ちください。」

そう言って黄泉さんはキッチンの方へ行ってしまった。

月さんもぺこりとお辞儀して、同じくキッチンへ向かっていった。

1人になり、冷静に考えてみる。

私はまだ何も知らない。

何故亡くなったのか、未練があるのかさえ…

名前も年齢も、何もかも。

思い出そうとすると頭が痛くなる。

ここで過ごしていたら、なにか分かるようになるのだろうか…

「お待たせ致しました」

気づいたらあっという間に料理が来たらしい。

ふわっと甘い香りが広がる。

思わず顔を上げると、ティーポットを持った黄泉さんがいた。

「こちらはハチミツレモンティーです。」

「…これが私の生前の思い出の料理…」

まさか紅茶とは。

黄泉さんは慣れた手つきでカップに紅茶を注ぎ、最後に輪切りのレモンを乗せた。

「こちらを飲めば、貴方の記憶を取り戻せます。思い出せば、無事閻魔様の元へ行けますよ。」

「…え、閻魔様!?」

驚いた。

童話の話と思っていた人物の名前が出てくるなんて。

本当にいるのか。

「えぇ。ここはあくまで生前の記憶を取り戻して、ちゃんとあの世へ行くための手助けの場所ですから。」

審判を下すのは閻魔様です、と黄泉さんは笑った。

なるほど、私はこれを飲んで過去を知って…

そして、閻魔様の元で審判を下され、万事解決ということ…らしい…

半信半疑。

分からないことだらけだが、やってみないと分からない。

だって、ここでグダグダしても、自分では分からないのだから。

「…ではいただきます…!」

カップを両手で持ち、ごくんと1口飲んだ。

その瞬間、頭の中に色んな映像が浮かび上がってきた。


一ノ瀬 日華(23)、過去を見る。

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