第3話
第3話:水仙とクローバー
水仙とクローバー
貴方は私のことをなんでも知っている。
貴方は周りを良く見ている。
それでも、
貴方はーー私の憎しみには気づかない。
『好きです。付き合ってください』
定型文(テンプレート)な文をLINEに乗せて、一大決心で送った、半年前。
2人で見に行った映画館。
放課後寄り道しに行った海。
テストお疲れ様、と乾杯したカフェ。
電車で肩を借りて寝て、彼が電車を降りるまで手を繋いだり。
貴方と初めて撮った写真は、現像して大切に飾ってる。
全部、素敵な思い出。
「…半年前までは、手を繋げるなんて思ってもみなかったな」
手を見つめながら、自然と呟いていた。
最近、満たされないことが多い。
好きと言う気持ちよりも、嫉妬と憎しみの気持ちが強い気がしてならない。
学校で話せないのも、私が勇気をだして話しかければもっと話せることを知っている。
要らぬ嫉妬を影でしてないで、ちゃんと話せば聞いてくれることも知っている。
全部分かってるのに、できなくて。
これじゃ、片思いしてる時と同じなんて思ってしまった。
…いや、片思いしている時の方が幸せだったのかな
分かんない。
嫉妬。
他の女の子と楽しそうに話しているのが気に食わない。
自分には話しかけないくせに、他の人には話しかけるところも。
私と、他の人と話すトーンが、少し違うところも。
考えればキリがない。
本当は、嫉妬なんてしないで、純粋に好きでいたい。
笑って貴方の隣にいたい。
もっと話したいし、デートもしたい。
貴方を、独り占めしたい。
でも、それは叶わないのは分かっている。
付き合う前から知っていた。
貴方が私を良く知ってるように、私だって貴方のことを良く知ってる。
貴方が良く話しかけに行く人も。
楽しそうにしているとこも。
最近はそれを自然と見ないようにしている。
いや、避けていると言った方が良いかもしれない。
見たら、苦しくなるから。
それでも、好きな気持ちが変わらないのは、貴方と話せば、「あぁ、やっぱり好きだな」と思ってしまうから。
貴方の好きなところは、嫉妬以上にたくさんある。
笑うところが可愛いところ。
えくぼができるところ。
友達と話していると、少し口が悪くなるところ。
さり気ない優しさがあるところ。
周りを良く見ていて、良く気づくところ。
だから、リーダーをやりたくなくても、自然と皆を引き連れている。
そんなところも。
トマトは無理なのにケチャップは平気なとこだとか。
寝起きが悪くて、1時間は動けないとことか。
些細なことでも、全部が大好き。
だけどーー
これだけ好きでも、付き合ってても、振り向かないのは分かってる、分かってた、
「…分かってた、はずなのになぁ…」
涙が自然と頬を伝っていた。
憎いはずなのに、『好き』な気持ちを止められなくて、ずっとループする。
苦しさでどうにかなってしまいそうだ。
もしかしたら陸も好き(同じ気持ち)かも、と言う期待と、自惚れていた恥ずかしさ。
目頭が熱くなる。
体を抱え込むように蹲った。
最初から(この感情なんか)なかったら良いのに、と何度思っただろう。
自分から告白して付き合って、確認もせず悲観している私は、なんて卑怯者だろう。
今日は彼と久しぶりに会う。
なんて顔で会おうか。
まだ時間はある。
そうだ、花を買おう。
何がいいだろうか。
水仙と…それから四葉のクローバー。
大好きな貴方へ、皮肉をたっぷり込めて。
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