第22話


「先生はどうするの?」あたしは聞いた。



まだ傘は受け取ってない。



「車だから大丈夫。いつ降られてもいいように、その傘は常に車の中に入れてあるんだ。気にせず使って?」



「そう……じゃぁ大丈夫ですね」



あたしは神代の手から傘を受け取った。



「何?僕のこと心配してくれるんだね。優しいね、君は」



は―――?



いや、それは当然でしょ。ヒトとして。




でも……




心がちょっと軽くなる。



重いものばかり背負って気がしてたから、今ちょっと楽になったかも。






「ありがと」



あたしは笑った。神代のことは憎い。けれどひとときの休戦だと思えばいい。



何せあたしは傘を持ってきてない。昇降口の傘立てには誰だか分からない傘が数本立っていたけれど部活動でまだ校内に残っている生徒のものかもしれないし。窃盗までしてこれ以上目立ちたくない。



「これで風邪ひかなくて済んだ、ホントにありがと」



初めて神代に見せる笑顔だった。



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