第21話
あたしは振り返った。
神代は手にビニール傘を持っている。コンビニで売ってるあの安っぽいの。
走ってあたしの下に来ると、
「これ。持っていきなさい」と傘をずいと差し出してきた。
「え?いいよ、そんなの」
「いいって、どうやって帰るの?傘持ってきてないんでしょう?だからそんな所で佇んでるんでしょう?」
あたしが何て答えようか考えてると、
「持っていきなさい。女の子は体を冷やしちゃいけない」
とにっこり微笑んだ。
あ……今。笑った……
さっきは威嚇する猫のような感じだったのに。こっちがすり寄って行っても顔や腕に傷さえ残しそうな勢いだったのに。
ちょっと……可愛いかも。しかも、あたしなんかの為にわざわざ走ってきて。
優しいのかな?
いやいや、相手は神代だよ。
これがこいつの手かもしれない。気を許した笑顔を向けてきて、こっちが『特別』になった気分にさせる―――
あたしは乃亜のようにはならない。
あたしは神代のことを好きになんてならない。
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