第18話
「と、とにかくこの白紙の答案はどういうつもりなんだ?」
場違いにも鬼頭に見惚れていた自分の考えを打ち消すように、僕は再度強めに聞いた。
鬼頭は顔を上げるとちょっと面倒くさそうに眉を寄せた。
「追試で60点以上取れれば、赤点は免れるんでしょ?だったらいいじゃん」
まぁ確かに鬼頭が本気を出せば100点も出せそうだが。
「そういう問題じゃない!」
怒鳴ってしまったあとはっとなった。
確かに鬼頭の言った通り追試で60点以上取れば、問題ないが……だが、鬼頭が今回の試験で低成績……どころか何も書かずに提出してきた、ってことに問題があるのだ。
慌てて取り繕うように怒りの表情を沈めた。
「君は僕が嫌いなのか?」
今まで生徒に好かれたことはあっても嫌われてるとはあまり感じなかった。
だから自分で言ってちょっと落ち込んだ。
「嫌い?」鬼頭はちょっと妖艶に微笑むと、
「嫌いなわけないじゃん」と身を乗り出してきた。さっき感じた香りがより一層蠱惑的に感じた。その瞬間、わけもわからず背中にぞくりと鳥肌だ立った。
「その逆。あたしは先生が好きなんだよ」
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