第13話


明良兄は乃亜のお兄さん。あたしのお兄役でもある。



昔はよく一緒に遊んだな。



大きくなって明良兄はかっこ良くなって、女の人とたくさんお付き合いしてて、あたしなんてかまってくれないと思ってたけど、昔と同じように可愛がってくれる。



「ホントは一緒に帰りたかったんだけどさ。お前が学校では他人のフリしろって言うから」



明良兄は口を尖らせた。そう、明良兄が言った通り、あたしたちは同じ学年の一年、明良は三年だ。



学年が違うと教室のある階数も違うし、昇降口の列も違う。顔を合わすことはあまりないけれど、それでも学食なんかで顔を合わせることがある。



例え視線が合ったとしても、互いに無視を決め込んでいる。もちろん、そうしようと決めたのはあたしだけど。



「だって、神代に変に勘ぐられたこっちが困るじゃん。あたしと明良兄に接点があったらだめなんだよ」



あたしは濡れた制服のブレザーを脱ぎながら答えた。



ついでにブラウスも脱ぐ。



「そう言うけど、神代に近づけてるのか……」と言いかけたところで明良兄は慌てて顔を逸らした。



「おまっ……!こんなところで脱ぐな」



「え~、いいじゃん。べたべたで気持ち悪いもん。それにキャミ着てるから大丈夫。そもそも明良兄はあたしのお兄ちゃんだし」



「そういう問題じゃない!てかお兄ちゃんじゃねぇし!」と言って明良兄が更に顔を逸らす。



その横顔がちょっと怒ってるようにも見えた。



「じゃあどういう問題?」



あたしは明良兄の横に座って、彼の膝に手をついた。



「どうって……」明良兄は怒った表情から一転、今度は困ったように眉を寄せる。




「お前……そうやって神代に迫ってるのか?」




明良兄がまたもちょっと怒ったように眉を吊り上げた。



そうやって……?



あたしは自分の格好を見下ろす。



レースをあしらった黒いキャミソールに、制服の短いスカート姿だった。



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