第12話
「おじゃま♪」
梶は強引にあたしの傘に入り込んでくる。
「ちょっと!」
「固いこと言うなよ。駅までだから。な?」
「駅までね」
面倒だけど、それ以上に断るのも面倒。そう言うことで、あたしたちは肩を並べて歩き出した。
遠くの方から女子たちの悪意ある視線が突き刺さるようだったけれど、気にしない。慣れてるし。今更そんな視線でビビる程でもない。
でもあたしの小さな傘じゃ二人入るのはやっぱり無理で、駅に着く頃はべたべたに濡れていた。
梶に文句を垂れながらも濡れたまま電車に乗り、不機嫌を背負って何とか家に着く。
鍵を開けようと、鍵穴に鍵を差し込んだけど何か違和感があってあたしはドアノブを回した。
「あれ?開いてるや。あたし家出るときちゃんと閉めたはずなのに」
あたしの両親は海外赴任中だ。二人ともアメリカの大学で仕事をしている。お父さんは物理学者で、お母さんは日本語講師。お父さんの方は元々こっちの大学で講師をしてたけど、向こうの大学で共同研究とかで引き抜かれたワケ。お母さんは元々ロサンゼルス出身で、その後日本に来て所謂バイリンガルだったし。
だからこの家にはあたし一人。
な、筈なのに……
玄関には見慣れた男物の靴があった。
あたしは急いで玄関に上がると、リビングまで走って行った。
扉を勢いよく開ける。
「明良兄!」あたしは笑顔でお兄を呼んだ。
「よっ!」
明良兄はソファに胡坐を掻いてくつろいでいた。
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