第5話
すらすらと公式を述べるあたしに、神代はちょっと面食らったように唇を結んだ。
薄い唇……
でも軽薄そうに見えないのが不思議。
「授業はちゃんと前を向いて聞くこと」
神代はちょっと微笑むと、くるりと背を向けた。
男の人にしては華奢な背中。
淡い色の髪の毛。
同じ色をした瞳。
全体的に色素が薄い感じがするけれど存在感はある。不思議な男だ。
その全部を手に入れてやる。
そしてあいつが乃亜にしたように、
全部、あたしが壊してあげる。
そう、これは乃亜の復讐だ。
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