第4話




―――




――――――







「(a+b)x2−(a+b)x=(a+b)(x2−x)=(a+b)x(x−1) であるからして……」



さっきから得意げに因数分解の公式を説明してるのは、憎き乃亜の仇、





神代 水月かみしろ みつき





“みつき”って名前が変わってる。女みたい。




だけど―――きれいな名前―――……






25歳。独身。



175cm(推定)A型。






仇でなければ、ちょっと好きになりそうな整った顔だち。ちょっと女っぽいけど。


神代は甘いマスクに、優しい喋り方と男女隔てなく気さくな接し方をする。故に女生徒から絶大にモテる。




まぁ?分からないわけじゃないよ?



この頃の女子って意味もなく年上の「大人の男」に憧れを持つもんじゃない?



でも、乃亜姉は単なる『憧れ』なんかじゃなかった。その気持ちを超越する程の感情を持っていた。



だからか……神代にとっては鬱陶しいだけの存在だから?



それに黙っていたって、女に不自由しなさそうなルックスだし。






それで、乃亜をいいように扱ってたなんて……



許せない!






「……う、鬼頭きとう!」



名前を呼ばれてあたしは顔を前に戻した。





「聞いてるの?鬼頭」




甘いマスクに苦笑いを浮かべて神代が顔を傾けた。天然なのか計算なのかこの仕草が妙に様になっている。




「聞いてますよ。



b−a=−(a−b) だから,次の式は共通因数でくくれます。



(a−b)x+(b−a)y=(a−b)x−(a−b)y=(a−b)(x−y) 」



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