第8話

5·5話:今日の彼女


「…七人の美女…気になる…説明なさい、いっちゃん…。」

ズズイッとゴールドに"不思議"こと、おとぎ話の不思議さんが顔を近づける。

顔は無表情だが、興味津々である。

彼女の表情の読み取りは"5柱"にしか分からない。

5柱とは。簡単に言えば死神界のトップ5である。

·正確できっちりな生真面目な丸メガネ

·ムードメーカーで元気が取り柄の使い物になる(多分)犬

·無表情おとぎ話ガール、おとぎ話の不思議さん

·ツンデレの頑張り屋、ツンデレポニテガール

そして、

·口の悪いイタズラ王で気分屋、イタズラ好きのゴールド

この個性が強い人達が5柱である。

「ふっ不思議…!落ち着けって。話す。話すから!取り敢えず退いて来れ!」

焦り顔で不思議を引き剥がす。

これは、ゴールドがなずなの魂を取り、直人と契約して帰ってきた日の後。

誰ともいなくなったゴールドの元にこうして、不思議が来た訳である。

トンッとゴールドの背中に壁が当たる。

その動けなくなったゴールドに、不思議はそっと片手を壁に手を置く。

壁ドン状態である。

「おい、不思議。離れろと言ったろ。」

どうにもゴールドは仲間相手だと少し口調が変わるらしい。口が悪いのは変わらないが。

「秘密事は…静かに…行った方が…良いわ…。」

「いや、だからってなぁぁ。」

顔が青ざめる。

「なっ!またあんたら何してんのよ!」

驚きひきつった顔をしながら、ドアの前で立っている。"ツンデレポニテガール"だ。

「あっ!良い所に!ツンデ、助けてくれ!!」

「あ…ツンツン…。」

「何がツンツン、よ!」

その気に触るあだ名止めて、と言う。

「…で?あんたらは何してんのよ?百合?」

「バッッッカ。んなのある訳ない。」

「百合…ふふ…良い…。」

「良いのね…。」

呆れつつ、ツンデはゴールドと不思議を引き剥がす。

「あ…待ちなさい…いっちゃん…話…終わってない…。」

逃げようと、そそくさドアの前まで来ていたゴールドの肩をがっしり掴む。

「チッバレたか…。」

「何をそんな隠すのよ…。」

怪しむ様にじっとゴールドを見る。

「そんな後ろめたい事はしてない。」

ムッとした顔で否定する。

「いつも…してるもの…ね…。」

「それもそうね。」

うんうんと納得する二人。

「何納得してるんだ。してない。」

「そんなに言うなら話さないぞ。」

脅し。

「ごめん…いっちゃん…話、して…。」

「何?何の話よ。」

両手を組み、眉をひそめる。

「直人の話だよ。イタズラし掛けた奴。」

「またやったの?バカね。死神なんだからさっさと魂とって帰れば良いじゃない。」

呆れた顔でツンデが言った。

「なーに言ってるんだ。イタズラするのが楽しいんだ。」

ニヤリ、と面白そうに笑うゴールド。

「…はぁ。」

「んで、美女の話だが。」

「美女…万歳…。」

本を両手で持ち、ゆっくりとした口調で不思議が呟く。

「彼女達は七人もいるから曜日事の彼女にしようと思ってね。弱ハーレム万歳ってか。」

「曜日で!?何て事人間にしてるのよ!教育に悪いわ。」

ツンデが声を上げる。

信じられない、と目が物語っている。

「教育て(笑)あいつは大学生だぞ。」

「…最高ね…直ツン…。」

朝日直人。死神界で"直ツン"と言うあだ名を付けられる。

「彼女達は知っていて、直人に説明してもらう事になってる。なずなの事は一時的に忘れてるから目の前のハーレムを思う存分楽しめる。…まあ、彼女達は一緒に会えないがな。」

「…1日一人って事なの?」

「そうなるな。」

「はぁ…目眩がしそう。」

「…先が…楽しみね…。」

直人がこれから、どうなるのか。

それは彼女の手の平の中に転がっている。

「彼女達は…そうだな。」

人差し指を唇に当て、弧を描いた。


     「《今日》の彼女だ。」

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