二章
第7話
5話:A happy day:monday 柏 赤芽
事故が在ってから、二ヶ月後。
俺は病院を退院した。あの時、事故でぶつかった車が、救急車を呼んでくれたらしい。
看護師に言伝てに教えてもらった。
記憶が飛び飛びで、曖昧だが何となく覚えている。
警察からは、「お酒飲んだのに運転しちゃ、駄目でしょ。何?"一人?"次からは誰かに変わってもらいなさい。後で事情聴取と罰金等の説明するから。警察署、寄ってね。」と言われた。
次からはサービスを頼もう。そう思った。
それから三時間くらい聴取を食らった。
それで、今に至る。
カラカラと車椅子を動かす。大抵完治したが、医者に暫く(数日)は使え、と言われたからである。
そこまで都心の街(道)では無い為、人通りが少なかったのは有難い。
細い路地に入る。このまま数十メートル進めば、俺の住むマンションに着く。
(…後、ちょっと…。)
ガツンッ。何かが車椅子の車輪に当たる。
「えっ?」
下を覗くと、地面の段差にぶつかり、動けなくなっていた。
「どーしよ。」
これくらいなら、何とか持ち上げられるか?
手に力を入れ、持ち上げる。
駄目だ。難しい。初めて車椅子の大変さを知った。
「あの~大丈夫です?」
横から疑問系の言葉が降ってきた。
「手伝いますよ~。段差、ですよね~。」
語尾に~の伸ばし棒を付けながら話す女性。
その女性の服はいわゆる、ロリータ系だった。
全体が黒く、フリルが沢山付いた。
髪も金髪で、高い位置でツインテールで結んでいた。目は赤紫色だ。頭には紫色の薔薇が付いたカチューシャが付いている。
人前だったら目立つだろう。彼女には良く似合っていた。
バチッと目が合う。ビビーンッと何かが繋がった気がした。何だろう。ドキドキする。
女性も同じなのだろうか。少し、頬が赤い。
『七人の美女と運命をーー』
女性が言ったのではない。(勿論俺も。)頭の中で響いた言葉。
ハッと我に返ると、女性は後ろにいた。
「…動かしますね~。」
取っ手を握り、少し後ろにバックする。
前輪を浮かし、段差の上に着地した。そのままカラカラと車椅子を動かし、エレベーター前に来る。
「…何回です~?」
「ごっ五階です。」
「了解~。」
そう言って上の矢印のボタンを押す。
ボタンが点灯し、少しして扉が開く。
女性が五階と表示されたボタンを押した。
『上へ参ります。』
機械音声がし、ゆっくり上へと上っていく。
「あの、ありがとうございます。ここまで連れてきて頂いて。」
「良いんだよ~。赤芽、福祉士だからさ~。」
車椅子は慣れてる慣れてる~と軽い口調で話す。
先程より、口調が軽い気がする。
「お兄さん私より上だったらごめんね~。敬語、疲れちったから~。」
「いや、大丈夫ーー」
そう言った所で五階に着いた。
「き…貴方もここに?」
「うん?や、ここには住んでないよ~。困ってたから、助けただけ~。」
「そっか…あ、ここまでで大丈夫。ありがとう。」
ペコリと頭を下げる。
「そんなんしないでよ~。ホント、押して来ただけだから~。」
ニコッと微笑む。
彼女のワンピースの裾が揺れる。
何だろう。彼女と別れたらいけない気がする。
と言うか、離れたくない。そんな気がした。
「…好き、です。」
何時の間にか呟いていた。
「…あっ!?ごめんッ!初対面の男に告られるとか、ホントーー
「…良いよ~…。」
小さな声が聞こえた。その直後、満面の笑みを浮かべた。
「良いよ~!付き合おう!私達!きっと、運命!」
頬を赤くしながら大きな声で話す。
「…えっと、それじゃあ…。」
「「名前、教えて~。教えてくれる?」」
声が被さる。ポカーンとした後、二人で大笑いした。エレベーター近くに住んでる人に怒鳴られるまで。
「…俺は、朝日直人。大学3年。」
「うちは柏赤芽~。福祉士~。」
「「宜しく、直人~(赤芽)。」」
再び笑い、お互いどちらからともなく、抱き締めあった。
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