第6話

4·5話:「悪いですねぇ。」


冥界。その、何処かにある死神の国(アジト)。

そこに、死神が現れた。

何もない空間から、黒い陰を纏わせて。

ここは一つの国として、色んな店や町、建物がある。

死神が現れたのは、魂を集める死神達が集う建物の一角だ。外見は普通のビル。中身はオフィスと言う感じだ。

死神の国なので、勿論全員が死神なのだが。

「たっだいま~。はぁ、疲れた。」

そう言い、黒のフードを片手で外しながら地面に着地する。

「お疲れ様です。"イタズラ好きのゴールド"」

「お疲れ~て、そのダッサイ異名止めてよ。"生真面目な丸メガネ"」

「貴方もですよ。しかし、これはどうしても必要ですからねぇ。我々には"名前"が無いものですから。」

「そだけどさぁ。」

ぷくぅと頬を膨らませ、不服そうに返事をする。

「何回このやり取りをしましたかねぇ。」

「さぁ?終わる度にしてんじゃね?」

両手を広げ、分からないと言う風に。

「口の聞き方と、その足!組まない。行儀が悪いです。」

「ったく。お前ら何回同じ件やってんだ?」

「"使い物になる(多分)犬"!」

「(多分)は要らねーんだよ!」

呆れ口調でやって来て、すぐ怒りだしたのは、同僚の死神。

彼が来るのもまた、"いつも通り"である。

「んで?ゴールドは今日もなんかしたのか?上に怒られッぞ。」

「だーいじょーぶだって。どうせ、死ぬし。」

「お前なぁ。」

「でも、良い事したんだよ?七人の美女から好きな人選べるってやつ。」

「はぁぁ?」

驚きと呆れが混じった声。

「…はぁ。また、したんですね。そう言う事。」

死神の信頼度(好感度)が下がります、と頭を抱える。

「もう下がってんじゃね。」

「お前は黙ってろ。ゴーグル!」

「ゴーグルじゃないし!ゴールドだし!」

「うるさい…いっちゃん。…本の…邪魔。」

「あ、ごめん。不思議。」

不思議とは"不思議"の事ではない。

別の死神の名前の略である。

短い癖ッ毛の紫や青が混じった髪と無気力な目。

そして、本を手に持ち、独特のあだ名で他の死神を呼ぶのが特徴の死神。

「"おとぎ話の不思議さん"。すみません。邪魔をしてしまい。私達は彼方で話しますゆえ。」

「そうして…。」

そう言って全員そそくさと別の場所に移動する。

"不思議"は読書に戻る。

何故、彼女に逆らわないのか。

それは、"彼女を怒らせたら怖い"からである。

案外しょうもない、と思われても仕方ないのだが、これは死神界の掟、暗黙の了解の一つである。

以前彼女を怒らせたバカが居た事で、国が半壊された。それからと言うもの、誰も彼女に手出しする·逆らうものは居ないのだ。

これと言って不思議は悪い命令などはしない。

ただ、『うるさい…本の邪魔…』と言われたらそこを退くだけで良い。

本の邪魔さえしなければ。

「ホント、怖ぇぇな。おとぎ。…て、ゴールド何してんの?ニヤニヤして。」

嫌な予感がする…とも言いたげな顔で、犬がゴールドの見ている物を後ろから覗く。

「んー?リストだよ。リストぉ。」

ヒラヒラ、ファイルを見せる。

これは、色んな死者の個人情報が書かれた紙である。

「お、おお~…。お前のタイプっぽいな。」

引きぎみに感想を述べる。


『未死亡者:朝日 直人(22)  享年:未


19××年生まれ

生梅市で育つ

豊岡小学校でーー………』


「…私の記憶ですと、純粋·素直·童貞·etc…イタズラしがいのある人、ですよね。」

「そっ!いやぁ、今回も良い奴に出会ったよ。嬉しい限りだね。」

「最低だな。」

それからまた、少女ならぬゴールドは朝日直人のページを見る。

そして、ニヤリと不適な笑みを浮かべた。

「あーあ。早く死んでくれないかなぁ。美女とさ。…この私が魂を刈り取ってやる。」

「悪いですねぇ。」

平坦に呆れた言葉を述べた丸メガネも、不適な笑みを浮かべた。

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