第8話

第7話:改めましての結婚式


「結婚式…」

ルイはポツリと呟いた。

「はい??」

聞き返すのは、もちろん(?)ランスだ。

「だから、結婚式。やりたいんだけど」

「………えっ」

(え、えぇぇ!!?はぁ??またこの人は何を言い出す…!?『何当たり前のことに驚いてるんだ?』て顔がすごい腹立つ…!結婚式って国民や貴族に知らせるためにさんざんやったろ…まさか、やりたいって個人か~?)

色々な葛藤をなんとか胸に抑え、ランスは「ん゛んっ!!」と咳払いをした。

「…結婚式がやりたいことは分かりました(何とかね!?)。でもしかし、なぜです?」

(リズ様のためだろ…)

「リズのためだ」

キリッとしながら言うルイ。

ランスは半ば…いや、すべて分かっていながら聞いた。

「ですよね~…(最早その回答が安心する…)」

「…ねぇ、俺の言葉になんか文句でもあるの?」

にこっと笑わない笑みを浮かべて、ルイは問う。

「な、ななななんでもないです…。それより、どこでどうしたいというプランはあるんでしょうか」

必死に話題を逸らした。

リズのことしか興味ないことが功を奏し、特にルイは気にする素振りはない。

ルイ(王子)のいうことは絶対だ。

決定事項みたいなものである。

「うん、もちろん。俺がリズのことに関して何も考えてないみたいな言葉は心外。君は与えられた仕事をやってくれたらいいよ」

そういって、ルイはメモの書かれた紙を差し出す。

「はぁ。…ここは…ルイ王子、ここをお使いになるのですか?」

メモを見たランスは、驚きでつい、聞き返してしまった。

ルイはリズの写真(隠し撮り)を眺めて機嫌が良いのか、少しにやけるように微笑んだ。

「リズが憧れていたからね。三日以内によろしく頼むよ」

ひらひらと手を緩く振りながらルイは言う。

メモに書かれているのは、場所だけじゃない。

洋服や装飾品、諸々の準備も含まれている。

それをすべて三日以内に…何とも酷な王子だ。

「…みっっっ!!?……~~っ分かりました!このランス、精一杯務めさせていただきます!」

もう半ばやけくそでランスは答えた。

以後、地獄の三日間がランスを襲ったのだった。


         ***


リーンゴーン…

と、優しい鐘…チャペルの音が響く。

一人のメイドとお付きが両開きのドアを開け、純白のドレスに身を包んだ女性が、バージンロードを歩く。

手には白いバラの花束を持って。

ゆっくりと歩き、前で待つ人のもとへ歩いた。

やがて男女は、向き合う。

「きれいだよ、リズ」

「ありがとう、ルイくん」

リズは照れたように微笑んだ。

「…すごいね。いきなり着替えて!て言われたときは驚いたけど…まさか、丘の上にこんなきれいな教会があったなんて!」

そう、リズ達がいるのは古びた教会。

今は使われておらず、埃をかぶっていたが、この三日間で清掃が行われたのだ。

「うん。しばらく使われていなかったから、誰も知らなかったみたい。でもほら、おかげで二人きりの結婚式ができる」

「そうだね!」

あたりを見まわしても、遠くに護衛がこっそり見守っているだけで、他に誰もいない。

教会にある椅子も、誰一人として座っていないが、それは二人にとって関係のないことだった。

「夢みたい。まさか私がルイくんとウエディングドレスを着て、式をあげれるなんて。本当にありがとう、ルイくん!私の夢の一つを叶えてくれて」

「当たり前でしょ。リズの隣は俺しかいないし、これからも、リズの夢を叶え続けるから」

だから、と跪き、手を握った。

改めてリズを見る。


  「…だから改めて俺と、結婚してください」


(夢みたい…)

景色が明るい。

いつも以上に、何もかもが輝いて見える。

「…もちろん!」

ルイくんを抱きしめた。

顔を上げて、笑いあって、どちらともなく、キスをした。

「こちらこそよろしくね、ルイくん♡」

「よろしく、リズ」

そういって、ルイはリズをひょいっと抱き上げた。

もちろん、お姫様抱っこ。

そのまま、バージンロードを歩いていく。

あぁ、この先もどうか、二人だけの幸せな日々を過ごせますように。

「…ねぇ、ルイくん」

「なぁに、リズ」

リズは、とびっきりの笑顔で、耳打ちするように呟いた。


       『大好きっ!』


                          【完】

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