第16話
陽菜紀にドタキャンされた次の日、私は珍しく残業だった。
私が所属している部署は所謂内線対応の通信機器が専門で、今期新しく発売したインターネット回線を利用した機器が爆発的に売れる中、古いタイプのものを解約する顧客が続出と言う事態を招いている。
私は今の時点で解約専門部署、と言う席。今後全機種解約が終わったら異動になるだろうことは想像ができた。
もちろん会社側も新しいインターネット回線の売り出しを推し進めているから、解約と言うのは仕方のないことだけれど、定時の17時30分を時計が差し示す少し前でも膨大な量の解約案件が山積みになっていて、ちょっとうんざり。
大体の法人は18時が定時と言う所が多いから、18時を過ぎるとクライアントに電話も繋がりにくい状況の中仕事は進まず、結局20時を回ったところで同僚たちが次々に「もう今日はおしまい」と言って自己完結していく。
一人、また一人と帰って行って定時刻だったら十名程居る部署が、その四分の一の数に減った所私も帰ることを決意した。
「
と、私が帰り支度をしているのを見計らって女性の同僚が声を掛けてきた。
普通なら「いいですね」とお付き合いするのだが、今日はそんな気も起こらず……と言うか陽菜紀のことが気になっていた私は、彼女のマンションにもう一度行こうと決めていた。約束はしてないけれど、心配だから……いいよね?声を聞いたらすぐ帰るつもりだし。
もちろん同僚のそのお誘いは丁重にお断りをして、会社を出ると
「中瀬さん?
なかせ あかり さん―――?」
と、男性の二人組から声を掛けられ私は立ち止まった。
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