訃報は突然に
第15話
■訃報は突然に
私と陽菜紀が中学生や高校生の頃、それは『恋』にもっとも興味があり、もっとも想像力がある年代
「いつか大人になったら自分の産まれた年のワインをもらいたいな。それか同じ数だけの薔薇」
と、私は当時流行っていたドラマの話題を出したのを覚えている。
「そんな古いワインきっと不味いよ」と陽菜紀は苦笑してたっけ。「それよりも私は豪華クルーズでフレンチとかがいいな」と夢見がちな私より陽菜紀の方が幾分か現実的だった。
そんな夢みたいなことを語った時期も確かに存在したのだ。
現実はクルーズどころかワインすらもらえない冴えない女だけど。
アパートに戻った私は鈴原さんから預かった赤ワインのボトルをまじまじ眺めてため息。
鈴原さんも―――
きっと陽菜紀のこと、ただの同僚に思ってない。
きっと鈴原さんは……
考えて、そのことを考えることすらおこがましい、と慌てて頭を振った。
鈴原さんが陽菜紀のこと好きだったとしても、私にはどうすることもできない。
だって陽菜紀は結婚してるし、素敵なご主人がいるから。
ベッドにドサリと身を沈め、近くに転がったスマホを手繰り寄せるとメール着信のお報せが点灯していた。
もしかして陽菜紀から?とちょっと期待したがメール元は山川さんで
“女子会どうでしたか?まだお喋り中ですか。僕は帰宅したところです。あなたも帰り気を付けてください。おやすみなさい”
と書いてあった。
優しい人。
スマホを握りしめてぼんやり思った。
実は山川さんとマッチングが成立するまで、私は二度程マッチングが成立していたが、二人とももっとガツガツ食らいついてくる感じだった。趣味や嗜好なんかの話はまだいい、住んでる場所や職場のことを聞かれるとなるとちょっと警戒心が出てきて、挙句性癖のことまで聞かれたときはかなり引いた。
当然、即お断り。
どうやら私をすぐ寝れる安い女だと勘違いしているようだ。アプリのプロフィール欄に写真も載せていなければ、それらしい文言も書いていないのに。
でもきっとこの二人はマッチングが成立した女の人全員にそう言ったメールを送っているに違いない。中にはそうゆう関係を望む女の人も居るかもしれないけれど
生憎だけど私が求めているのはそんな安い関係じゃない。
“今日は会えなかったです。残念ですけど。私ももう帰りました。心配ありがとうございます。おやすみなさい”
すぐに山川さんにメールを返信して
私にはこれぐらいの方がちょうどいいし、落ち着く、と吐息を吐いた。
クッションに顔を埋めて、目を閉じる。
だけど目を閉じた瞼の裏に――――
鈴原さんの人懐っこい笑顔が張り付いて離れない。
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