第10話
定時は17:30。
陽菜紀のマンションまで電車で30分もあれば着ける。約束は19:30。
陽菜紀は夕食を作る、と言ってくれたからお腹に何も入れない方がいいだろう。そう思い職場の近くのコーヒーショップに立ち寄ってコーヒーを飲みながら時間調整をした。
その間、私はマッチングアプリで知り合った男性にメールを送った。
“今日はこれから女子会です。御馳走作ってくれるみたい。
今度
返事はすぐに帰ってきた。
“お疲れ様です。女子会、楽しそうですね!僕も混ざりたいです(笑)楽しんできてください!
因みに嫌いなものもアレルギーもありません。今から楽しみです”
山川さんはいい人…だと思う。写真だけ見るとちょっと地味目だけど、良い言い方を変えると「真面目そう」や「実直そう」だ。職業も中小企業の広告代理店だと言う。
結婚するなら絶対にこうゆう人がいい。
陽菜紀のご主人は彼女の隣に並んでいても違和感なく素敵な男性。その上お金持ちときている。
別に山川さんを下に見ているわけではないけれど、私は陽菜紀のご主人より山川さんのように素朴で、でも真面目に生きている人の方が合っていると思う。
分相応と言う言葉があるぐらい。
山川さんと短いメールを終えて、何となく陽菜紀のSNSをチェックする。
陽菜紀のSNSには十分前の18:00と言う時刻に、
『今日は親友が遊びにくるので御馳走作ってま~す♥久しぶりだから楽しみ♪』と言う文章の上にお洒落な雑貨屋さんで売っているような洒落たネイビーのエプロン姿で料理を誇らしげに見せる彼女の姿があった。
誰かに撮ってもらったのだろうか。自撮りにしちゃきれいな角度だった。まぁ今は色んな自撮り方法があるしね。
相談事がある、と言ったがその表情はいつも通り、にこやかできれいなものだった。深刻な悩みじゃないかもしれない。
けど…お邪魔することになってるけど、出張とか言ってたけど急に中止になってもしご主人が居るのなら邪魔しちゃ悪いしな……と思いつつもその間にどんどん彼女のフォロワーから「いいね」が送られてくる。
ここまで宣言されると逆に行かなかったら感じ悪いよね。とりあえず相談ごとが何なのか聞くだけでもしよう、と思って時計を確認するとすでに18:20をさしていた。
電車移動や駅からの徒歩を考えるともう出た方がいい。
そう思い上げた腰が思いのほか
重かった。
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