午後07:42の出来事
第7話
■ 午後07:42の出来事
『相談したいことがあるの。明日の19時半にうちに来てくれない?
旦那は出張だし、せっかくだから女子会してオールしよっ♪私、御馳走作るから
あ。あとケータイショップも付き合って♪』
陽菜紀からメールが送られてきた日付と時間を確認すると
20XX年 3月21日 19:08
と表示されていた。もう24時間以上経ってたけれど、未だに返事をしていない。
年度末だし、決算月でもある。あれやこれやとバタバタしてた、と言うのは完全なる言い訳。
正直会いたくなかった。勘違いしてもらっては困るけど別に陽菜紀のことが嫌いとかじゃない。
だって私たち幼稚園からの幼馴染だったし。当然小学校、中学校、そして親友だった私たちは同じ高校を受験して同じ日に合格通知を貰って、同じ高校にも進学した。
高校卒業後は私は市内の大学へ、陽菜紀は美容関係の専門学校へと進学し、それぞれの道を歩む
―――筈だった。
腐れ縁って言うのかな。私たちは切っても切れない関係。お互い進む道を違えても、プライベートで良く遊んだり旅行にも行く。それは幼馴染の域を超えていた気もした。
もちろん私から陽菜紀と離れたいと思ったことはないし、陽菜紀もきっとそんなこと思わなかったに違いない……そう思いたいけど。
こうゆうの依存してる、って言うのかしら。
だからか、最近私はこの異常とも言える“依存”状態から抜け出そうと、少し陽菜紀と距離を置こうとしていた。
大学卒業後、私は大手の通信会社に事務職として働きはじめもう五年になる。一方の陽菜紀は専門学校を一年で中退、その後はアルバイトを転々としていたけれど一昨年、年上の会社経営者と言う男性と結婚した。おまけにとてもハンサムですらりと背が高い。
けれど陽菜紀ならそんなハイスペックな男性を、言い方悪いけどゲットできる、と思ってた。
彼女は昔からそれだけの美貌と知識……良い意味でハングリーさを備えていたから。
30歳も目前となると、色々な節目と言うか……私の場合周りの結婚ブームは二年程前ピークを迎えていた。そのブームのさなか陽菜紀は結婚したわけだけど。彼女たちが一段落して今度はベビーブームの波が来ている。
そんな中私は、と言うと未だに彼氏が居ないと言う危機的状況に陥っているわけで、少々……いいえ、はっきり言うとかなり焦っている。
このまま独身を貫くにも今の一般職だったら貰える給与もたかが知れてる。決して高くないけれど安くもない賃貸アパートで独り暮らしだから貯蓄もあまりない。これと言った資格もない。
その現状が余計に焦りに繋がる。
でも、数か月前にはじめたマッチングアプリで気の合う男性とメール交換をする仲にまで発展した。相手は顔写真もはっきり載せていてプロフィールもしっかりしていた、だから「いいね」を送ったら向こう側からも色よい返事を貰え、そこから数か月は趣味のことや普段の出来事などメールでやりとりする関係になり、
来週、とうとう実際に初めて会うことになった。
陽菜紀はどう思うだろう。マッチングアプリで出逢った男性とデートをすることに関して。
「慎重な灯理らしい」と言うかしら。それとも「マッチングアプリで出逢いなんて灯理らしくない」と言うかしら。
デートのことは……黙っておくべきか、それとも相談すべきか。
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