第8話

mission7: human body class3


「…結構お勉強致しましたね。」

ニコニコと笑みを浮かべながら、茶を容れている。

「…そうだな。」

無愛想に一言呟き、お茶請けのチョコレートをつまんだ。

前回、黄金比やら体の部位やら、嫌というほど学んだ。

頭の中、隅々まで授業内容でいっぱいだ。

メモに、と持ってきたノートは文字と図で埋め尽くされた。

たったー、二回の授業なのに。

「…もう少し授業は続きますからね。」

そう言い、笑う彼女に尋ねる。

「…お前はどうしてこんなに詳しく知っている。」

ずっと気になっていた事で、今更とも思われる疑問だ。

その言葉に呆れる事なく、彼女は口を開く。

「…私も学んだからですよ。人は自然に全ての事を学ぶ事は出来ませんから。」

答えにはなっているが、上手くはぐらかされた気がする。

言葉を切り、気づくと触れるかと言うくらい、顔を近づけていた。

僕の腕を伸ばす形で握っている。

そして、そのまま続ける。

「…私の正体を知りたければ、私の授業を引き続き学んで殺せるまでになってください。」

少しゾッとする笑みを浮かべながら、彼女は囁いた。

僕は頷くしかなかった。


***


「…さて、与太話はここまで。授業に入りますよ。」

先程の表情とは打って変わり、ニコニコと愛想の良い笑みを浮かべ、ガラガラとボードを引いてくる。

僕は無言で新しいページを開き、ペンを握る。

「…今日は…そうですね。引き続き体についてなのですが、部位とかではなくどちらかと言えば機能に近い話をしましょう。」

ポンッと手を打って彼女は微笑んだ。

「…人の目はーー」

彼女の言葉が、続く。


***


「…ご主人様は本当に理解が早いですねぇ。それとも早く終わらせたいだけ?そんなに私、嫌われてますか。」

「…当たり前だろッ!」

ダンッと思い切り机を叩く。

が、彼女は驚くことなく、表情を変えずに自分を見ている。

彼女にとって何の変哲もない会話だったらしい。

余計に腹が立つ。

僕の家族が死んだことを、簡単に表しているようで、叫びたくなる気持ちを抑える。

抑えるために、大きく息を吐く。

「…今日はもういい。君も部屋に戻れ。」

そう言い残し、席を立つ。

「…全く、困ったご主人様ですね。」

クスッと笑いを含めた声が後ろから聞こえた。

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