第33話


チクン…



心臓に小さな痛みを感じた。






誰もあたしのことを知らない。



ううん、知られちゃならない。



あたしの正体を―――







昼休み前の休み時間、あたしの机にリコと千里が集まって談笑していた。



「ねぇ、朔羅はお弁当?今日学食いかない?あたしAランチ食べたい♪」



「お☆いいね~。俺もAランチ」と千里。



「あんたは誘ってないっての」リコが突っ込みを入れた。



「あたしはお弁当……」と言いかけて、お弁当箱が入れられてる紙袋を手で探った。



あ。そうだった……



「ごめん。ちょっと……」



あたしは紙袋を手に取ると、席を立った。






キョロキョロと教室を眺めるとメガネの姿はなかった。



そういやあいつ、あたしの前の席だけど休み時間になるといっつも消えるよな。



あいつ…どこ行ったんだ?



教室を出て廊下を歩いてるとメガネが男子トイレから出てきた。



緊張感のない顔つきで、のんびりとハンカチで手を拭いてる。





あたしは廊下の柱に隠れると、メガネが通り過ぎるときに、



「おい!メガネ」



と声を掛けた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る