第15話


会長室があるこのビルの最上階、茶色い立派な扉の前であたしは足を止めた。



中から叔父貴のちょっとくすぐるような重低音の声が聞こえてくる。



だけど内容は全然甘さを含んでいなくて…



「…何!?あのシマはてめぇんとこの縄張りじゃねぇか。カスリ(上納金)も回収できねぇでどうする。



―――は?朱雀会のもんが?




貴様!それでも青龍の名前背負ってんのか!?



いいか。一週間待ってやる。それまでにキッチリ片つけて来い!!―――」



出だしでこれかよ。



間違いなくヤクザだな。





朱雀会……



南の極道組織が、こっちまで侵食してるのか?



叔父貴は今までもあたしにそういうこと一度も言わなかったけど、朱雀と玄武が最近勢力を増して、青龍、白虎を脅かしているという噂がある。





「叔父貴~、来たよ」



あたしは何でもないふりして、扉を開けた。






「朔羅!久しぶりだな」



窓際の大きな社長机に座っていた叔父貴はぱっと顔を上げた。




どれぐらいぶりだろう。こうやって叔父貴を見るのは。






黒い髪はきっちりとオールバックにしてあって、その一房が額に零れ落ちてる。



切れ長の黒い瞳。キリッと釣りあがった眉。すっと通った鼻筋。意思の強そうなセクシーな唇。





その全部が好きだ。




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