第5話


「てめっ!!何調子乗って抱きついてきてんだよ!」



あたしは小声で言うと千里を睨み上げた。



「だって嬉しかったんだもん」



千里は小さいころから良く知ってる……いわゆる腐れ縁って仲だ。




「もうっ。ほんっとラブラブなんだからぁ」



リコは嬉しそうに手を合わせると、



「お邪魔虫は退散するわ~」



と言って、さっさと行ってしまった。




ちょっと待て!誰がこんなやつとラブラブなんだ。




と言いたかったけど、あたしはその言葉を飲み込んだ。




言えるわけねぇ。





あたしは桜が舞い散る学校の歩道を千里と肩を並べて歩くことになった。



「千里、こないだはうちの組のもんがお前の親父に世話んなったな」



「いいってことよ♪ま、けしかけてきたのは違う組のもんだったらしいし。お前が気にするな」



あたしはちょっと笑った。



千里の親父はマル暴(暴力団対策を担当する警察内部の組織で、警察内の隠語だ)だ。



小さい頃から組のもんがパクられる度に、千里の親父が受け持ってくれていた。



うちの組のもんにもまけねぇ強面だが、あたしには優しい、いいおやっさんだ。



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