第90話

私はこの数年間榛野と連絡を取っていなかったし、彼女が結婚する相手の事は何一つ知らない。


どんな風に付き合い、プロポーズされ、結婚に至ったのか。



あの招待状を見ただけで、私は彼女が幸せなのだと思っていたけれど、ふいにそんな風に感じてしまっていた。



「ねえ、将暉君。絵里がちょっと疲れちゃったんだって。先帰って送ってってあげてよ」



早速榛野は口実を作り、マイクを使って将暉にそう言った。



「え、大丈夫?」



将暉は心配げに私の顔を覗き込む。



「え、あ、うん。ちょっとだけ疲れちゃって」



とりあえず私は榛野の嘘に合わせて元気なさげに装ってみる。



「無理しないで先帰りなよ。俺たち時間までいるから」



コウが言う。

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