第74話
けれど普段の彼女はそんな背景を一切感じさせなかった。
学校までもちゃんと電車で通学していたし、高級ブランド品を持っている所も見た事がない。
23歳になった現代では将暉と同じくヒカリとも連絡を取るどころか、今何をしているかも知らなかった。
だから私にとって最後に見たヒカリは、今目の前にいる高校時代の彼女のままなのだ。
私と別れた後、将暉とヒカリが付き合い始めたということは風の便りで知った事だった。
けれど6年の月日を経て、今2人がどうなっているのか私は何一つ知らなかったし、知りたくもない。
「絵里、聞いてる?」
その声で我に返ると、榛野が怪訝そうに 私の様子を伺っていた。
「え?」
「だから、ヒカリも一緒に帰るって」
「あ、・・・うん」
未来がどうであれ、過去にいる今はヒカリに対してあからさまな態度をとる事はあまり正しいとも思えなかった。
この頃のヒカリはまだきっと将暉と付き合う事になるとは思っていないはずなのだ。
ヒカリは小さく
「ありがとう」
と呟いた。
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