第73話
“2009年7月2日(木) 16時02分”
「あ、ヒカリも一緒に帰るって」
そういう榛野の後ろにはショートカットの黒髪に、化粧っけのないよく言えば清楚、悪く言えば地味な印象のヒカリが立っていた。
彼女を見た途端、胸がドキリと嫌な鼓動を打った。
彼女と私は最初そんなに親しい仲ではなかったが、榛野とヒカリが幼なじみだと言う事もあって、いつもではなかったけれど3人で行動する事が増えていった。
そしていつの頃からか将暉、コウ、榛野、ヒカリ、そして私の5人で集まるようになったのだ。
結果として将暉とヒカリを出会わせたのは私で、だけどまさか将暉がヒカリの事を好きになるなんて思いもしなかった。
もちろんあの頃はまだヒカリの事を友達だと思っていたし、それにヒカリは高校時代、彼氏など作った事もなく、どちらかというと恋愛などした事もないような感じだったから、すっかり安心しきっていたのだ。
しかしそんな地味な印象の彼女は学校ではちょっとした有名人だった。
なぜなら彼女の親は長者番付ランキングで毎年名前が載るほどの大金持ちで、青山の一等地に、それはそれは大層な豪邸を構えているのだ。
噂によると家の地下にはプールまであるという。
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