第71話
信号が青になる。
私は早く将暉に会いたくて歩く速度を速めていた。
今度こそ、もっと何か大きな変化を起こさなければ。
現代から過去へ飛び込むようにして横断歩道を渡りきった途端、昨日と同じように辺りがざわめき始め、私は顔をあげる。
目の前には綺麗に整列した机と、その先には何も書かれていない黒板がある。
私はやはり制服を着ており、バッグを机の上に置いて座っていた。
私はその瞬間すぐにここがどこかわかった。
3年間、毎日通っていた場所であれば、さすがに忘れるはずもない。
ここは私が通っていた高校の教室だ。
教室には梅雨独特の湿った空気が漂っており、窓の外はどんよりと雲に覆われていた。
またこの教室を訪れる事ができるなんて思いもしなかったけれど、懐かしさのあまり私はそっと自分の机を撫でていた。
当時はいつも早く帰りたいとばかり思い、この教室に対し何の感情も持たなかった。
けれどやはり私の青春の大半はこの場所だったのだと改めて感じる。
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