第68話

将暉と別れ、私が家の玄関を開けるとそこにはマドカが立っていた。



「えりねえちゃん、おか、え、り」



のんびりとした声でマドカはそれだけいうと眠たそうに目を擦っている。


マドカがいるという事はやはり、家に帰ると過去から現代に戻るというのも間違いではなかった。




その場でポケットに入っていた携帯を確認すると、2015年8月19日17時00分。


日付は元と変わらないけれど、戻ってくる時間は昨日と同じ17時丁度だった。





携帯には着信が1件。


それからLINEも入っている。


まさか将暉からか、と思ってみたら一紀からだった。




あのパンドラの箱の中には、今日持って出たはずのストラップが昨日までと同じように保管されていて、こないだ将暉から届いたあの絵葉書も同じようにしまわれていた。





結局、現在の携帯の連絡先の中にさえ将暉の名前はなかった。


今回のこのタイムスリップで変わった過去は、私からするはずだった告白が将暉からに変わった、それだけだった。

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