第65話

「あ、うん。昔誰かに教えてもらったから」



もちろん昔将暉に教えてもらったとは言えなかった。



「そっか。だから俺、小さいときから元気がなくなったりするとよくあの辺行ってたんだ。勇気もらえる気がして」


「・・・そうだったんだ」


「えりぃと出会ったのもそこだったじゃん。俺、あの時ちょっと運命かもって思ったりして」


「え、本当に?」



私は思わず声を弾ませていた。



「うん、俺そういうの意外と信じてるの」



私はなんだか涙が出そうで、だけれど必死に我慢していた。



彼も私と同じように運命という言葉を私に当てはめてくれていたのだとわかると、どうしようもなく愛しくてたまらなかったのだ。


私たちの小指にはこの時きっと赤い糸が結ばれていて、それはもしかしたらまだ切れることなく23歳の彼にも繋がっているのではないかと思えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る