第61話

私の家の前に着いたときには2人ともすっかりびしょ濡れになっていた。



「待ってて、今タオル持ってくる」




そう家に戻りかけて、私は足を止めた。


もしここで家に入ってしまったら、また現代に戻ってしまうかもしれないと思ったからだ。



「いいよ、どうせまた濡れるし」



彼がそう言ってくれたので、私は代わりに玄関の前に置いてあった傘をとって戻った。



「・・・わざわざ送ってくれなくて良いのに」



彼は付き合う前からいつもこうして私の事を家まで送ってきてくれていたのを思い出す。



「全然近いし」


「でも将暉の家、真逆だし」



私は傘を開き、彼に差し掛ける。


すると突然、将暉は傘を差し掛けた私の腕をつかみ、真面目な表情で私を見つめてきた。




ドクン、とまた体が反応する。


まるで体中が心臓になったみたいだった。



彼に掴まれた腕から私の鼓動が伝わってしまうような気がして少し腕を引いてみたけれど、彼は決して腕を離さなかった。

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