第58話

そんな私が唯一今選べるものは、告白のシチュエーションと言葉だけだ。


その告白によって未来の彼が私と別れる選択をしなくなるような、そんな一撃必殺できる告白が必要なのだ。




今なら何か言えそうな気がする。


この雨宿りしたカフェの前で、6年後の彼にも届くような告白を。



「あのさ・・・」



私が決死の思いでそう口を開いたその時だった。




突然、将暉がぎこちなく私の手を握ってきたのだ。


思わず彼の顔を見上げると、彼は何も言わず顔を赤らめている。




予想だにしなかった展開に私が混乱していると、



「・・・走るよ!」



彼はそう言って、青になった信号めがけて勢いよく私を連れ駆けていく。


彼に手を引かれながら、私は降りしきる雨空を一度見上げ、それからまた視線を落とす。

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