第56話
けれどもし、私が今日ちゃんと彼に告白しなければ、それこそ私と将暉の付き合っていた過去さえ変わってしまうのだろうか。
ふと浮かんだその疑問を前に、私は少し迷い始めていた。
もし、このまま私たちが付き合わない過去に変えたなら、私の未来は少し楽になるのではないかと思ったのだ。
彼と別れてからの私の人生は、まるで他人事のようにどうでもいいものに変わってしまった。
心の真ん中を失ったような喪失感がいつも当たり前のように私の中にあって、それは私の努力でどうにかなるようなものではなかった。
タイムスリップをして過去の彼に再会しても、いつかどうせ彼に振られてしまう未来が訪れるのなら、そんなに苦しい思いをするのは1度だけで十分だ。
結局ここでは告白はしないままカフェを出ると、外は雨が降っていた。
「わあ、雨だ。えりぃ傘持ってる?」
彼に言われ、私はサブバッグの中を探してみたけれど、傘は入っていなかった。
「持ってないや」
「俺も持ってないんだよな」
「じゃあそこのコンビニで買う?」
私は横断歩道を渡った先にあるコンビニを指さし、それからバッグの中から財布を取り出して開けてみた。
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