第二章 再び過去へ
第49話
4【再び過去へ】
人生初のタイムスリップを経験し、
一夜明け、ベッドから起き上がると、昨日の夜引っ張りだしたパンドラの箱が蓋を開けたまま置いてあった。
「・・・そうだった」
昨日の事をはっきり思い出した時、やはり夢ではなかったのだと確信した。
あれは夢の出来事ではなく、昨日の出来事としてしっかり記憶に残っていたからだ。
その瞬間、私の心は一瞬にして将暉の事でいっぱいになった。
この胸の高鳴りは何年ぶりの感覚だろうか。
6年前のあの日、将暉と私が出会った日から、私たちは毎日のように連絡を取り合う仲になった。
お互いの家が近かったのもあって、休みの日は彼が家から自転車で会いにきてくれたし、夜遅くて会えない時には長電話もした。
会話の内容は本当にたわいない事ばかりで、ただそれが楽しくて私たちはあの頃当たり前のように沢山の時間を共有したのだった。
彼はなぜだか私のすべてを理解していてくれるような気がした。
彼と話していると自分でも気付かなかった自分自身を見つけられるような気がするのだ。
あの偶然の出会いは私の中で日を増すごとに確信めいたものになっていった。
私たちは出会うべくして出会ったのだ、と。
そして密かに育っていた将暉への恋心に決着を付けるべく彼を呼び出した日、私は将暉からあのストラップを受け取ったのだ。
昨日の夜、その箱の中を探りながら私はある実験を試みる事を決心していた。
あのタイムスリップが昨日1回限りの出来事なのか否か、確かめようと思ったのだ。
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