第40話

「ほら、あの十字路危ないから。車が突然飛び出してきたりするし」


「あら。そうなの?」


「赤坂御用地の周りとかいいですよ!緑も沢山あるし、今は桜が咲いてるし」


「ああ、そうね。教えてくれてありがとう」



おばさんは納得したのか、してないのか曖昧な笑顔を浮かべ、それから



「じゃあ夕飯の準備があるから」



ともう一度会釈し、しっぽを振り続けるラブを連れて隣の家に入っていった。




私はしばらくの間隣の家をぼんやりと眺めてから、一見2015年の未来となんら変わりない風貌の我が家の玄関を開けた。


リビングに行ってみるとテーブルの所で麻央が座っており、リビングの隣にある和室でマドカがぐっすりと眠っていた。



「あら、おかえりなさい。随分遅かったわね」



食事の準備をしていた母がキッチンから私に声をかける。



「ただいま」



そう当たり前のように答えた後で、私は再び和室に視線を戻し、そして目を見張った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る