第39話

その時私はふと、大学の頃母から聞いた話を思い出した。



“お隣で飼っていたラブちゃん、この間家の近くの十字路で事故に遭って亡くなったんだって”



ラブは私が大学に通っていた頃、赤信号を無視してきた車にひかれ、死んでしまったのだ。


聞いたときは自分の家のペットではなかったけれど、驚き、悲しかったのを覚えている。



そんな事も知らずに無邪気にしっぽを振ってくるラブを見ていると、なんだかとてもいたたまれない気持ちになった。




「おばさん、ラブのお散歩コース変えたほうがいいですよ」



私はラブの鼻の頭を指でなでながら、おばさんに言った。



「え?どうして?」



きょとんとした表情で私を見る彼女。

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