第38話

家まであと少し、という所で私が生まれたときから家の隣に住んでいるおばさんとすれ違い、私は



「あ、こんばんは」



と会釈をする。



「あら、こんばんは」



彼女は愛犬のラブラドールのラブを連れて散歩途中で、私に微笑みかける。



「学校の帰り?」



そう言われて、自分が今高校生である事をまた思い出す。


ということは、今目の前にいるおばさんも6年前のおばさんになるなのだなぁと改めて彼女を見てみても、さほど変化は感じられなかった。



「・・・ええ、まあ」



私はそう頷いてから、ハッハッと舌を垂らしてこちらを見つめるラブに目を向けた。



おばさんがラブを庭で飼い始めたのは私が中学2年の頃だったと思う。


まだ小学生だった妹と一緒になってラブの虜になり、私も麻央も学校から帰るとよくラブの散歩の代行をさせてもらったものだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る