第37話

あっという間の出来事に、放心状態のままその場に立ち尽くす私。


一体私の身に何が起こっているのだろう。



やはり夢なのではないか、そう思った方がよほどリアルな感じがした。



しかしこの夢は一向に覚める気配はなく、



「・・・これからどうしよう」



彼が行ってしまうと、またこの途方もないタイムスリップの解決策を考え始めるしかなかった。




とにかく一度、家に帰ってみるしかない。


ここが過去であろうと、現在であろうと私の帰れる場所はそこにしかないのだ。




私はしかたなく家の方に向かって歩き始めた。


ほんの少し前まで真夏の昼下がりだったはずの空はもう春の夕焼け色に染まっている。



そんなオレンジ色の空と桜の木々を眺めながら、家までの道のりをゆっくりと踏みしめるように歩いた。




道すがら昔あった店や、コンビニ、2015年には存在している建築中の建物なんかを横目に見ながら私は驚きよりも懐かしさに浸っていた。

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