第22話

14時過ぎ頃、私は一人家を出た。



赤坂迎賓館はうちからタクシーで千円くらいの距離にある。


真夏の東京のこの時間帯は、一歩外に出るだけで容赦なく命を削られていくような殺人的な暑さで 、さっさとタクシーを捕まえようと日陰を歩きながら私は道路の方に視線を送っていた。



しかしなぜだか今日に限って一向にタクシーが通らない。


タクシーを捕まえられずに10分ほど歩いてい ると、国道 246号線の交差点にさしかかる。



その先には都会には不自然なほど鬱蒼とした緑が生い茂る赤坂御用地があり、うるさいくらいに蝉が鳴いていた。




信号を待ちながら、その時ふいに目の前の信号機がぐにゃりと曲がった気がした。



私は一度目を強くつぶり、再び目を開けた。




信号機は真っすぐと立っている。


気のせいだろうか。



ひどい暑さのせいで少し熱中症になりかけているのかもしれない。

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