第21話
今はまだその中身をしっかりと確認する事はできないが、捨てる事など絶対に出来なかった。
いつか私がまた誰かと本当の恋に落ち、彼の事を完全に過去の一部として消化出来たときにもう一度開いてみよう。
そして懐かしさや、甘酸っぱい思い出に少しの間浸る事が出来たなら、そのときは処分するなり、とっておくなり、その時の私が決めればいい。
「パワースポットか・・・」
最近一紀の事もあり、確かに心身共に疲れきっていた。
信じている訳ではないけれど、たまにはそういう場所に足を運ぶのも悪くはないだろう。
「せっかくだし行ってこようかな」
片付けを済ませ、準備をしてリビングにいくと、母と、妹の麻央がテレビを眺めていた。それからその隣で娘のマドカが一生懸命フォークを使って焼きそばらしき物を口に運んでいる。
「えりどっかいくの?」
焼きそばを食べながら、可愛いおかっぱ頭のマドカが大きな目を瞬かせて尋ねてくる。
「迎賓館ってとこ。ってわかんないよね。マドカもいく?」
するとマドカが首を横に振った。
「今日、ママとばあばとお買い物いくの」
「え、ふたりは来られないの?」
私はさっき受け取ったばかりの参観証を母と麻央に見せながら聞いた。
「私、全然興味ないし」
明るい色のボブの髪を荒っぽく振って麻央が言った。
「それ、あんただけなのよ。お母さんも麻央も特に興味ないから」
「ああ、そうなんだ」
私も特にそんなに興味がある訳ではないけれど、それは言わずにわかった、とだけ口にした。
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