第19話

その時ふいに思い出し、私はベッド脇のサイドテーブルの引き出しにしまっていた、1ヶ月前将暉から届いていたあの絵葉書を手に取った。



改めて、私は将暉の事を考える。


そこに書かれていた彼の字は高校の頃から変わらず私よりもずっと達筆で、私はあの一文を何度も、何度も読み返した。




“お元気ですか?”




まるでその中に秘められた別の意味を読み解くかのように、呟いてみたり、蛍光灯に透かしてみたり、文字を指でなぞってみたりしながら、繰り返し読んだ。


それでもやはり何も浮かんでは来なかった。



私は諦め、ベッドに寝転びながら再び裏のイラストを眺めた。


高校の頃、ここに一緒に足を運んだのは将暉だった。



通常は毎年夏になると迎賓館では一般公開が行われるが、私が行った時は確か2009年の秋であり、その年迎賓館は国宝指定がなされ、さらに天皇即位20周年を記念して普段は抽選がなければ入れないのだが、抽選なしの一般公開に運良く中に入る事が出来たのだ。

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