第18話

父は昔からなぜかそれに毎年応募していて、毎年夏になると足を運んでいるのだった。



「え、なんで私?」


「あんた昔高校の頃、一回行った事あったでしょう。それからお父さん毎年あんたの分まで申し込みしてるのよ。でもあんたの分が当たったのは今年が初めてみたいよ」



初耳だった。


確かに私が昔何気なく迎賓館に行った話をした時の父は今までにないほどよくしゃべっていたけれど、まさかその後毎年申し込んでくれているなんて思いもしなかった。


きっと父は娘の私と迎賓館の話をできた事が相当嬉しかったのだろう。



「それがちょうど今日なのよ。8月18日の10時から17時まで」


「え、今日?」


「あんたどうせ予定ないんでしょ?せっかくだから行ってあげたら?お父さん喜ぶわよ」


「まあ、ないけど・・・」


「お母さんやかんの火かけっぱなし!」



リビングから麻央が叫ぶ声がした。



「あ、いけない、お茶を淹れようとしていたんだった!」



母は慌てて部屋を飛び出していく。

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