第17話

「絵里、そういえばこれ」


そう言いながら母が部屋に入ってきた。


手には一枚の紙を手にしている。



「あら、あんたこれ全部捨てるの?」



母は部屋の脇に積まれた大量のゴミ袋を見て目を丸くした。



「ああ、もう全部着られないから」


「もったいない、お母さんでも着られるのないかね」


「ないよ、私でも着られないもん」


「もったいないね」


「で、なにそれ」



私は母の持っている紙を指差しながら言った。



「ああ、お父さんが置いてったのよ」



そう言って母はそれを私に手渡した。



「迎賓館の参観証」



それは毎年の迎賓館10日間限定公開にあたり、抽選で選ばれた人のみに送られてくる参観証だった。

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