第15話

将暉と別れて一紀と付き合うまで、私は相当の苦労を要した。


彼と別れた後の大学1年の時の事は思い出したくもない。


その時の私の行動はきっと異常だっただろう。



悪さや夜遊び、そんな行動がその1年の内にびっしりと詰め込まれたのだ。



その間、私は心の通わない恋愛をいくつも繰り返しては別れていた。


そんな殺伐とした私の心を救ってくれたのが、大学2年から働き始めたバイト先で知り合った一紀だったのだ。



彼は他の男達がしてくるような、私の事に対して深く干渉してくるタイプではなかった。


信頼し合っている、というよりはお互いに踏み込まれたくない領域というものがあって、それを無意識のうちに守り合っていただけなのかもしれないけれど。



だから私は彼といると楽だった。きっとそれは一紀も同じだったと思う。


彼は自由を愛していたし、私はそれを不満に思う事などなかった。



ただ、なんとなく最後に帰る場所として、お互いはお互いを求めていたのだ。


ただそれだけの関係であるにもかかわらず、私の心は一紀と出会って少し救われていた。



結果はどうであれ、将暉を忘れるために、一紀は私の人生において必要な人間だったのかもしれない。



バッグの中で携帯が鳴っていた。


その缶を脇に置き、バッグの中から携帯を取り出すと一紀からのLINEだった。



“一度、話し合いたい”

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