第13話

なんとなく見覚えはあるのだが、何をしまっていたかはすっかり忘れている。


私はその缶を引っぱりだしてくるとそれを持ってベッドに腰かけた。



父が実家のある北海道に帰ったとき、お土産として買ってきてくれた“白い恋人”の小洒落た缶だった。



そして、その缶がまさに“パンドラの箱”だった事に気付いたのは、私が何気無しにそれを開いて中を確認した後の事だった。



中に入っていたものは、高校時代付き合っていた元カレ、将暉との思い出の数々だった。


彼がくれたプレゼントや、写真、ほかにも色んな物が色あせずに残っている。


私は反射的にその蓋を閉めていたが、記憶はあっという間に蘇ってきて私の頭の中を駆け巡っていた。




私にとって将暉は昔から今までを通して人生で一番忘れられない人だった。


そして心から愛した人だった。

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