第12話

アパレルの仕事をしていると、嫌でも洋服はどんどん増えていくし、シーズンが終わるたびにこの中へと放り込まれていった服達はまるでブラックホールに投げ込まれるかように、その後二度と日の目を見る事はなかった。



しかし今やらなければ、またいつ片付ける気分になるかわからない。



この機会に一気に処分してしまおうと母に頼んでゴミ袋を何枚か用意してもらい、気合いを入れ直し、私はいらなくなった服や何やをゴミ袋にどんどん詰め込んでいった。



放り込みながらそれらを使っていた高校の頃や、買った時の記憶が次々と思い出された。



時折まだ着られそうな服を見つけて鏡にあてて見てみるが、今となっては着られるような服はほとんどなく、あまり変わらないと思っていたけれど自分が着実に大人になっている事を自覚する。




クローゼットの一番奥の方に何やらお菓子の缶らしきものを見つけたのは、その中を片付けを始めてちょうど1時間ほど経った頃だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る