第4話

1話:「相席良いですか?」


「…え、相席…ですか?」

「…はい。申し訳ありませんが…今丁度混みあってまして。宜しければお通し出来ますが、どうしますか?」

店員は本当に申し訳なさそうに聞く。

「あ、大丈夫なので通してもらって良いですか?俺から相席の人に言うので教えて頂ければ。」

「…かしこまりました。相席の方はーー」

ガラガラと戸を開け、店に入った。

教えてもらった方へ行くと、女性が一人座っていた。

茶色の髪を一つに結んでいて、どこか無気力。

クールな雰囲気の女性だった。

出来れば傷心中の俺は今女性には会いたくなかったんだけどな。

でも、見知らぬ女性にそんな事思ったってしょうがないし。

「…さいってー」

ポツリと女性が呟いた。

もう目の前まで来ていたから、つい聞こえてしまった。

…何か、あったのだろうか。

そんな事を心で思いながら、勇気をだして声をかけた。

「…あの、相席良いですか?」


***


…何を話そう。

ドコドコドコと心臓がうるさい。

緊張で脂汗さえ出てくる。

先程からポツポツと話しているけれど、またつまらないと思われてしまっただろうか。

最初に面白い話は出来ないと話したけれど、いざとなると結構気まずい。

俺はまだ慣れてるから良いとして(全然良くないけど)、混んでるからと相席になった女性はどうだろうか。

せっかく飲んでいい気分だっただろうに。

…いや、大人が酒を飲む時は大抵疲れたか、何かあった時か。

それは自分のことだろうと思い直す。

さっき出会ったばかりの女性に自分の気持ちを重ねるのは失礼極まりない。

「…そう言えばこれ、美味しいですよ。」

何とか会話の糸口を探し出し、切り抜けた。

戸雅さんも喜んでくれて何よりだ。

けれど、最初「…さいってー」と呟いていた戸雅さんの一瞬見えた寂しそうな顔が思い浮かんでつい聞いてしまった。

「…何かあったんですか?」と。

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